マオリ語教本 第1巻
著 者:P.M.Ryan
イラスト:Clare Takuira
出 版:財団法人福島県国際交流協会
翻 訳:マオリ語教本翻訳実行委員会
本誌は(財)自治総合センタ−から宝くじ普及広報事業の助成を受けて作成されたものです。
編集後記 (マオリ語教本翻訳実行委員会からの一言)
21世紀という新しい時代を間近に控えた今、来るべき新しい時代はいかなる時代であるのかを解く鍵
を、高齢化社会女性の時代国際化社会などのキ−ワ−ドに求める考えがあります。マオリ語教本翻訳
実行委員の人選に際し留意いたしました事は、実行委員は21世紀という新しい時代を担う人々から選び
たいという点でした。先のキ−ワ−ドから導きだされた委員の方々は次のとおりです。
まず高齢化社会というキ−ワ−ドから斎藤一郎(Mr.Ichiro Saito)さんに白羽の矢を
立てました。高齢化社会というと、ともすれば高齢者を社会のお荷物としてしか見ようとしない人々が多
いのですが、見方を変えれば高齢者こそ知識と経験の豊富な得難い方々であると思うのです。斎藤さんは
今年で73歳、元福島高校の英語教師だった方です。知識と経験の豊富な斎藤さんにまず翻訳実行委員に
なっていただきました。斎藤さんは期待に違わずその温厚な人柄で難解な翻訳のときも温かい雰囲気で解
決に導いてくれました。
次に21世紀は女性の時代だとよく言われておりますが、ここで言う女性とは多くの場合キャリアウ−
マンを意味し、主婦は置き去りにされたままでした。優秀な女性がキャリアウ−マンとなり、そうではな
い女性が主婦となったと思われがちですが、実際には実に優秀な女性が主婦のなかに潜んでいることに気
づきました。そしてこの主婦の方々の優れた才能を発揮する場を提供する事が行政に強く求められている
と考え、国際基督教大学で日本語学を専攻した主婦の坂本昭子(Ms.Akiko Sakamoto)
さんに参加をお願いしました。坂本さんにはいままで外国人に日本語を教えてきた経験を翻訳に際して活
かしていただきました。
さらに国際化の掛け声の一方で外国で蓄積したキャリアが日本では評価されない現実があります。荒哲
(Mr.Satoshi Ara)さんは東海大学大学院を経てフィリピン大学で学んだ方ですが、日本
社会は帰国後の荒さんを正当に評価しているとはいえないと思っております。そこで荒さんにも参加して
いただきました。この本の出版を契機に日本の社会が荒さんを正当に評価することを希望しております。
また国際化のなかで現在福島県には9000名を越える外国人の方々が住んでおりますが、彼らの有す
る日本人には無い技術や才能を生かすことがこれからの行政に望まれていると思います。例えば、テリ
ンガフイアハタ(Ms.Te Ringahuia Hata)さんは現在県立相馬高校の英語指導助
手で、ヒネランギマッコ−キンデ−ル(Ms.Hinerangi McCorkindale)さん
はハタさんの従姉妹で同じく英語講師をしております。ガフイアウェイド(Ms.Ngahuia
Wade)さんは北塩原村の中学校で英語指導助手をしており、この3人の女性はいずれもニュ−ジ−ラ
ンド出身のマオリ人の方々です。この3人の参加によりニュ−ジ−ランドまで行くことなくマオリ語教本
の翻訳を完成させることができました。
福島県国際交流協会の山崎逸子さんは裏方の仕事を一手に引き受けてくれ、同じく幕田順子さんは平成
9年に、当時福島県国際課の小野和彦さんと共にニュ−ジ−ランドフェアでマオリ舞踏団を福島に招待し、
この教本翻訳のきっかけをつくってくれました。また、同じ国際課のエレンバ−ジェスさんはこの教本
をニュ−ジ−ランドから購入してきてくれました。皆さんにこの場を借りて感謝の意を表します。
これらの優秀な方々と共に、意義ある仕事を成し遂げることができましたことは、私にとってもこの上
ない喜びです。委員の皆さんの多大な貢献に心から拍手を送るとともに、著作権許諾を快諾してください
ましたハイネマン社と著者P.M.リャン氏に感謝申しあげます。
1999年9月9日
マオリ語教本翻訳実行委員会
代表 吉田成志(Seiji Yoshida)
前書き
皆さんをマオリ語学習に駆り立てる理由はいろいろあるかと思います。例えば、マオリの一員として祖
先の残してくれた深い知識が自分に強い自信を与えてくれることを望み、さらに長い年月にわたり受け継
がれてきた貴重なものを共有することをお望みかもしれません。または、マオリ人ではないがより完全な
ニュ−ジ−ランド人たらんとしているのか、もしくは、マオリ人の思考形態や文化的経験に触れることを
望んでいるのかもしれません。
この教育課程はそんな皆さんのご要望にお応えしようと制作されております。この本は最初ハ−トペテ
ラ大学でマオリの青年たちに教えるために使用されていましたが、社会人の方々から、しかもマオリ人と
マオリ人以外の両方の方々から、そのコピ−を望む声が多くあったので教育課程を拡大することが決定し、
詳細な索引と練習の要点が付け加えられました。一度に少しずつ紹介しながら、会話の基本パタ−ンとし
てたくさんの練習が提供されています。
私にとってマオリ人の世界はマオリ人以外の人々の世界が失ってしまった様々な価値を有しております。
おおらかな人間関係、相互扶助、共同作業、家族の強い絆など、いまでは話に聞くだけで現実に見ること
は稀なこれらのものがマオリ人の世界の全てを成し、言葉はその世界の特徴を成しています。たとえ、マ
オリ語を使うことにより高度な専門的知識に到達することはないとしても、マオリ語を学ぼうとするその
事実は、あなたがマオリ人に関心を持ち、あなたの方からマオリ人に近づこうとする努力の現れなのです。
少なくともニュ−ジ−ランドの地名を恥をかくことなく、言い訳することなく、いつも発音できるように
なるでしょう。Kia kaha! Kia ma ia!(頑張って! しっかり!)
最後に、書かれた文字は本当の発音と言葉のニュアンスを伝えることができないことを思いおこしてく
ださい。マオリ語を話し、ときどき手伝ってくれる友は非常に尊いものです。
前置きはこれぐらいにして、さあ、第1課を始めましょう。